スポーツ科学の研究で分かっていることを、宣伝抜きで、専門用語をできるだけ使わずに整理した記事です。現在18本。いずれも一次文献(論文)にあたって書いています。
共通しているのは、「よく言われていること」と「研究が示していること」がずれている題材を選んでいることです。効果を断定せず、分かっていないことは分かっていないと書きます。
最初に読むならこの3本
どれから読むか、迷っていませんか。更新日が新しく、本文が長い順に3本を挙げます。
すべての記事(18本)
公開日の新しい順です。それぞれ、何を確かめた記事かを添えました。
16時間断食は痩せるのか——時間制限食と隔日断食の試験を読む
16時間断食やプチ断食は、同じだけ食事を減らす方法と比べて本当に痩せるのか。139人を1年追った試験では差は1.8kgで偶然の範囲でした。食べる量をそろえると差は消えます。
最終更新:2026年10月3日
月経周期に合わせて運動を変えるべきか
78研究を集め、51研究を統合した効果量は−0.06、研究者の言葉で「取るに足らない」。筋力については異質性ゼロで位相間に差がありませんでした。一方、主観的なつらさは一貫して報告され、遅発性筋肉痛と筋力低下も位相で差があります。
最終更新:2026年10月2日
脂肪燃焼ゾーンは存在するか
脂肪酸化が最大になる強度(Fatmax)は実在します。ただし26名で実測したところ、年齢推定による「脂肪燃焼ゾーン」との差は平均23拍/分でした。さらに若い過体重女性30名のパイロット試験では、より高い強度のほうが体重も体脂肪も落ちています。
最終更新:2026年10月2日
握力は寿命を予測するのか
17か国13万人のPURE研究では、握力は収縮期血圧より強い死亡予測因子でした。しかし8つの系統的レビューを評価したアンブレラレビューでは、説得力のある証拠と判定されたアウトカムは1つもありません。握力を上げれば死亡率が下がるかは未検証です。
最終更新:2026年10月2日
HIITは時短になるのか
HIITは短期の楽しさでは中強度運動を上回ります(Hedges g=0.44)。しかし12か月以上追跡した8試験では長期の継続率に優位がなく、実世界の研究ではHIITを自分で選んだ人の非監督下での週2回以上の実施が60.8%から19.6%に落ちました。
最終更新:2026年10月2日
運動中の水分補給
持久系種目の2,135人を分析した研究では、運動後の血中ナトリウム低下の主要な原因は過剰な水分摂取でした。汗によるナトリウム損失は主な原因ではないとされ、一部では関わるとも書かれています。専門誌上では、計画的に飲むか渇きに従うかで論争が続いています。
最終更新:2026年10月2日
クレアチンは腎臓に悪いのか
685の臨床試験を集めた解析では、副作用を報告した試験の割合は偽薬13.2%、クレアチン13.7%で差がありませんでした。筋力と筋量への効果は確立していますが、認知機能については最大の単独試験で主要指標が有意になりませんでした。
最終更新:2026年10月2日
ウォームアップでけがは減るのか
構造化された神経筋トレーニングをウォームアップに組み込むと、サッカーのけがは30〜50%減ります。ただし米国の高校14校で試した研究では差が出ず、週2回以上実施したチームは32%だけでした。効果を決めているのは内容ではなく実施率です。
最終更新:2026年10月2日
歳をとってからでは遅いのか
平均90歳の施設入所者10名が8週間で筋力を174%伸ばした研究を、原典で確かめ直しました。対照群を置いた100名の試験では113%増。骨は「減らさない」程度で、転倒を減らす証拠が固いのはバランスの練習。
最終更新:2026年10月2日
座りすぎは運動で相殺できるのか
1,005,791人のLancet解析では1日およそ60〜75分の中強度があれば座位と総死亡の関連は見られなくなりました。テレビは消えず、立つだけの中断は歩くほど効かないという結果もあります。日本人高齢者でも低活動かつ高座位で死亡リスクが高い報告があります。
最終更新:2026年10月2日
プロテインの「ゴールデンタイム」はあるのか
メタ回帰(筋肥大525名・23研究)では、条件を統計的にそろえるとタイミングの効果は消え、総タンパク質が最強の予測因子でした。総量は約1.6 g/kg/日前後で頭打ちになりやすいものの、値の幅は広く、就寝前補給も総量と切り分けにくい、という整理です。
最終更新:2026年10月3日
運動後に冷やすと回復は早まるのか
12週間の筋トレで毎回10分の冷水浴をした群は、積極的休養群より筋力・筋量の伸びが小さく、タイプII線維断面積は有意に増えませんでした。まとめ分析でも筋トレ適応への不利(標準化平均差 −0.60)が示される一方、持久系では差がはっきりしないと報告されています。
最終更新:2026年10月3日
睡眠不足は気合いで補えない
10代エリート選手340名の研究では、平日に8時間超眠っていた選手は怪我のオッズが61%低い結果でした(OR 0.39)。睡眠を削った翌日の運動成績は全体で中くらい落ち、とくに朝早く起きて削る形で大きく落ちます。必要な睡眠時間の目安も整理します。
最終更新:2026年10月3日
1日1万歩に根拠はあるのか
15コホート47,471人のメタ分析では、死亡リスクの低下は60歳以上で6,000〜8,000歩、60歳未満で8,000〜10,000歩で頭打ちでした。もっと多くても下がり続けるという別のまとめもあります。厚労省ガイド2023の目安は成人約8,000歩・高齢者約6,000歩です。
最終更新:2026年10月3日
有酸素運動をすると筋肉がつかない?
43研究の統合では、併行でも最大筋力と筋肥大は筋トレ単独とほぼ同じ(SMD −0.06/−0.01)。減衰しやすいのは瞬発力で、その差は小さい(SMD −0.28)。WHOは有酸素に加え筋トレ週2日以上、厚労省ガイド2023は週2〜3日を推奨し、両方取る設計です。
最終更新:2026年10月3日
筋トレは週何回が正解か
22研究のメタ分析では週1〜4回以上まで筋力は伸びますが、合計量をそろえると頻度による差は見られなくなります(p=0.421)。WHOは筋力強化を週2日以上、厚労省ガイド2023は週2〜3日を推奨。健康関連では週およそ30〜60分でリスク低下が最大のJ字型でした。
最終更新:2026年10月3日
運動前のストレッチは力を落とす
104研究のメタ分析では、運動直前の静的ストレッチで筋力が平均5.4%低下しました。1筋群60秒以上で影響が大きく、ストレッチ後に動的な動きを挟めば影響ははっきりしません。けが予防ではストレッチ単独の効果は示されていません。
最終更新:2026年10月3日
筋肉痛は乳酸のせいではない
コクラン12研究では、ストレッチによる翌日の筋肉痛の減少は100点満点で約0.5〜1点でした。回復法99研究の比較ではマッサージがもっとも効果的とされる一方、マッサージ単体のまとめは「小さい改善」と控えめです。NSAIDsは年齢や試験の組み方で結果が割れます。
最終更新:2026年10月3日