- Lancetの解析は1,005,791人・追跡2〜18.1年・死亡84,609人。もっとも活動的な群では座位と総死亡の関連が見られなかった(8時間超でもHR 1.04)。
- 必要な活動量は週35.5メッツ・時超=1日およそ60〜75分の中強度。テレビ視聴は減弱するだけで消えなかった。
- 加速度計8件・36,383人では、軽強度の活動が多い群でも死亡HRは0.38(中〜高強度の量をそろえた比較ではない)。座位最長群は2.63倍。
- 20分ごとに2分歩くと食後血糖・インスリンが下がる。立つだけは単試験で差なし、7件のまとめでは血糖に小さい効果。歩くほうが優れる。
- 日本人高齢者では低活動かつ高座位で死亡HR 1.36。在宅開始は座位2時間以上増加のオッズ比2.14。
- WHOと厚労省は座位を減らすよう勧めるが、時間の数値閾値は定めていない。
よく言われていること——座りすぎは体に悪い。でも運動しているから大丈夫。
研究が示していること——100万人超の解析では、1日およそ60〜75分の中強度の活動があれば、座位時間による死亡リスクの増加は見られなくなりました。ただしテレビ視聴だけは消えません。加速度計の研究では、軽い日常動作が多い人ほど死亡リスクが低い、という関連がありました。立つだけの中断は、歩く中断ほど効かない、という結果もあります。
100万人を調べたら、何が分かったか
この分野には、規模の点で群を抜いた研究があります(Ekelund et al., 2016, The Lancet)。健康な人を先に登録して何年も追いかけた研究(前向きコホート)16件を、同じ基準で分類し直してまとめたもので、そのうち13件から座位時間と総死亡率のデータを集めています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 対象者 | 1,005,791人 |
| 追跡期間 | 2〜18.1年 |
| 期間中の死亡 | 84,609人(8.4%) |
座位時間とテレビ視聴時間は、いずれも自己申告です。身体活動量は週あたりのメッツ・時(安静時を1とした強度×時間)で、人数が同じになるよう4つに分けた群(四分位)に分けています。
この研究が問いかけたのは、はっきりした疑問です。「身体活動は、長時間座ることの害を減らすのか。それとも、完全になくすのか」——論文のタイトルそのものです。
答え——活動量が十分なら、見えなくなる
参加者を身体活動量で4つのグループに分けて解析した結果が、こうです。
もっとも活動的なグループでは、1日の座位時間は総死亡率の増加と関連していませんでした。
1日8時間を超えて座っていても、週35.5メッツ・時を超える活動を報告した人では、死亡リスクの増加は見られませんでした(ハザード比1.04、95%信頼区間0.99〜1.10)(Ekelund et al., 2016, The Lancet)。ハザード比は1より大きいほど死亡しやすいことを示し、1.04はほぼ差がない値です。
一方、活動量の少ない下位2つのグループでは、死亡率が12〜59%高くなっていました。座っている時間が短い人でも、活動量がいちばん少ない群ではハザード比1.27でした。
「週35.5メッツ・時」と言われてもピンと来ないと思います。著者らは、これを分かりやすい形に翻訳しています。
1日あたり、およそ60〜75分の中強度の身体活動。
中強度というのは、早歩き、自転車、軽い水泳など、少し息が弾むが会話はできる程度の活動です。1日1時間強。決して軽い量ではありませんが、「不可能な量」でもありません。
ここまで読んだうえで大事なのは、これは観察研究の関連だということです。体調が悪い人ほど座りがちになる、という逆向きの説明を完全には排除できません。集団の推定であり、あなた個人に必要な量そのものではありません。
ただし、テレビだけは別だった
同じ論文には、興味深い但し書きがあります。テレビ視聴のデータを持つ6件(465,450人、死亡43,740人)では、次のようになっていました。
高い活動量は、長時間のテレビ視聴に伴うリスクの増加を「減弱させるが、消しはしなかった」。
具体的には、1日3時間以上のテレビ視聴は、活動量にかかわらず死亡リスクの増加と関連していました。もっとも活動的な四分位だけは例外で、そこでは1日5時間以上の視聴で初めて有意な増加が見られました(ハザード比1.16、95%信頼区間1.05〜1.28)(Ekelund et al., 2016)。
同じ「座っている時間」でも、仕事で座っている時間とテレビを見ている時間とで、結果が違ったということです。
なぜかは、この研究からは特定できません。考えられる説明はいくつもあります。テレビを見る時間帯(夜が多い)、同時に飲食している可能性、テレビをよく見る人の生活習慣全体の違い、など。ここは分かっていない、というのが正確な状態です。
日本の公的ガイドは、こども向けの参考として「特に余暇のスクリーンタイムを減らす」と書いています(厚生労働省, 2024)。大人向けの推奨には、画面の時間についての記述はありません。
「ちゃんとした運動」以外の動きも数えられる
もうひとつ、質の高い研究を紹介します。こちらは加速度計を使って実際の動きを測った研究を統合したものです(Ekelund et al., 2019, BMJ)。2016年のLancet論文の「訂正版」ではなく、測定法(自己申告ではなく機器)と対象が異なる別の統合です。
8件の研究、36,383人(平均62.6歳、72.8%が女性)、追跡期間の中央値5.8年、2,149人が死亡しています。
結果を、活動量の少ない順に4つに分けて示します。数字は、もっとも少ない群を1.00とした死亡のハザード比です。
| 活動の種類 | 第1四分位 (もっとも少ない) | 第2四分位 | 第3四分位 | 第4四分位 (もっとも多い) |
|---|---|---|---|---|
| すべての身体活動 | 1.00 | 0.48 | 0.34 | 0.27 |
| 軽強度の活動 | 1.00 | 0.60 | 0.44 | 0.38 |
| 中〜高強度の活動 | 1.00 | 0.64 | 0.55 | 0.52 |
ここに、この記事でもっともお伝えしたいことがあります。
軽強度の活動が多い群でも、もっとも少ない群に比べて死亡リスクは0.38——6割以上低い水準でした。ただしこの数字は中〜高強度の活動の量をそろえた比較ではなく、軽い活動だけで足りるという意味ではありません(Ekelund et al., 2019)。
軽強度の活動とは、ゆっくり歩く、立って家事をする、掃除をする、といった日常の動作です。着替えてジムに行くような「運動」でなくても、体を動かす量に数えられるということです。著者らも「強度を問わず、あらゆる身体活動が死亡リスクの低下と関連していた」と書いています。
そして座位時間のほうは、こうなっていました。
| 座位時間 | ハザード比 |
|---|---|
| 第1四分位(もっとも短い) | 1.00(基準) |
| 第2四分位 | 1.28(95%信頼区間 1.09〜1.51) |
| 第3四分位 | 1.71(1.36〜2.15) |
| 第4四分位(もっとも長い) | 2.63(1.94〜3.56) |
もっとも座っている群は、もっとも座っていない群の2.63倍。座位時間そのものにも、はっきりした関係があります。持病などの条件までそろえた解析では2.18倍に弱まりますが、関連は残りました(Ekelund et al., 2019)。
ただし対象は平均62.6歳で、女性が7割を超えます。デスクワークの30〜40代の男性に、同じ数字がそのまま当てはまるとは限りません。
座りっぱなしを「切る」とどうなるか
ここまでは「1日の合計」の話でした。では、同じ合計時間でも、途中で切るかどうかで違いが出るのか。これは実験で確かめられています。
過体重・肥満の成人19名(45〜65歳)を対象に、同じ人が3つの条件をすべて体験する無作為化クロスオーバー試験があります(Dunstan et al., 2012, Diabetes Care)。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 中断なし | ずっと座ったまま |
| 軽い歩行で中断 | 20分ごとに2分、軽い強度で歩く |
| 中強度の歩行で中断 | 20分ごとに2分、中強度で歩く |
食後の血糖とインスリンを測定した結果、軽い歩行でも中強度の歩行でも、中断なしと比べて食後血糖とインスリンが有意に低下しました(偶然とは考えにくい差)。血糖の曲線下面積は、座位継続6.9に対し軽い歩行5.2・中強度4.9でした(単位は mmol/L・時)。著者らは「心血管リスクを減らすための、重要な公衆衛生上・臨床上の介入戦略になりうる」と述べています。
2分です。20分ごとに2分だけ。これなら仕事中でもできる、という水準の介入で差が出ています。
ただし測っているのはその日の食後血糖です。何年も続けたときに病気や死亡が減るかは、この試験だけでは分かりません。
「立つだけ」では足りなかった
スタンディングデスクを導入した方、検討している方は多いと思います。しかし立つことと動くことは、体にとって別の出来事だという結果があります。
非肥満の成人10名を対象にした無作為化クロスオーバー試験です(Bailey & Locke, 2015, Journal of Science and Medicine in Sport)。今度は「立つ」条件が加わっています。
| 条件 | 血糖の曲線下面積(5時間・mmol/L) | 読み方 |
|---|---|---|
| 20分ごとに2分の軽い歩行 | 18.5(95%信頼区間 17〜20) | もっとも低い |
| 中断なしの座位 | 22.0(20.5〜23.5) | — |
| 20分ごとに2分の立位 | 22.2(20.7〜23.7) | 中断なしとほぼ同じ |
この試験では、立つだけでは座りっぱなしと差がありませんでした。著者らの結論は「軽強度の活動で座位を中断することは有益な食後反応をもたらすが、立位ではもたらさない」というものです(Bailey & Locke, 2015)。
なお、この研究では血圧や脂質のパラメータには、どの条件でも有意差が出ていません。効果が見えたのは血糖についてです。
これが意味すること
スタンディングデスクが無意味だという話ではありません。ただし「立っているから座りすぎ対策になっている」とは言えない、というのがこの研究の示すところです。
- 立つのではなく、歩く。2分でも構いません。
- 20〜30分ごとという頻度に意味がある。まとめて1時間歩くのとは別の効き方です。
- 軽い強度で十分。Dunstan らの研究では、軽い歩行と中強度の歩行で結果に大きな差はありませんでした。
トイレに立つ、飲み物を取りに行く、プリンタまで歩く——そうした動作が、この研究が言う「中断」にあたります。特別なことをしなくても、意識すれば作れる範囲です。
ただし、これらは食後の血糖という短期の指標を測った研究です。長期的に病気や死亡が減るかどうかを直接調べたものではありません。
中断の研究をまとめると、歩くほうが上
Bailey らの試験は10人でした。同じ問いを、条件が揃った複数の試験でまとめたのが Buffey らの系統的レビューです(Buffey et al., 2022, Sports Medicine)。
「座位を続ける」「短い立位で切る」「軽い歩行で切る」の3条件を、同じ日に比べた無作為化クロスオーバー試験を探し、7件を統合しました。対象は主に過体重または肥満の成人です。
| 比較 | 食後血糖への効果の大きさ(Δ) | 読み方の目安 |
|---|---|---|
| 立位中断 vs 座位継続 | −0.31(95%信頼区間 −0.60〜−0.03) | 小さい(目安0.2に近い) |
| 軽い歩行 vs 座位継続 | −0.72(−1.03〜−0.41) | 中くらい(目安0.5〜0.8の間) |
| 軽い歩行 vs 立位中断 | −0.30(−0.52〜−0.08) | 小さい |
インスリンでは、軽い歩行が座位継続より Δ −0.83(目安では大きい)低下しました。立位中断はインスリンにも収縮期血圧にも、まとめると有意な効果がありませんでした。血圧は立位でも歩行でも、この統合では効果がありませんでした(Buffey et al., 2022)。
ここで注意があります。Bailey らの単試験では立位は血糖に効いていませんでしたが、7件をまとめると立位にも小さい血糖低下が見えました。Bailey らの試験もこの7件の1つです。10人では見えなかった小さな差が、7件をまとめて計算すると見えた、ということです。著者自身の結論ははっきりしていて、軽い歩行の中断のほうが優れる、というものです。
デスクでできる行動に翻訳すると、こうなります。立ち上がるだけより、廊下を2分歩く。会議の合間にコピー機まで歩く。効果が「ゼロか完璧か」ではなく、動くほど血糖への短期の反応は良い側に寄る、という整理です。
それでも、これは1日の実験のまとめです。普段の生活で続けられるか、長く続けたときにどうなるかは、著者らも今後の課題だとしています。
日本人では、どう見えるか
ここまでの大規模研究は、欧米のデータが中心です。日本の読者向けに、国内の報告を2つ見ます。
まず、65歳以上の日本人10,233人を中央値5.3年追った研究です(Watanabe et al., 2022, Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports)。身体活動は国際質問票(IPAQ-SF)の自己申告で、週150分以上の中強度以上を「高活動」、座位1日300分(5時間)以上を「高座位」としました。
| グループ | 死亡のハザード比(高活動・低座位を1.00として) |
|---|---|
| 高活動・高座位 | 0.86(0.66〜1.12)※有意な増加なし |
| 低活動・低座位 | 1.09(0.88〜1.35)※有意な増加なし |
| 低活動・高座位 | 1.36(1.10〜1.67) |
活動が少なく、かつ座位が長い群だけが、基準より死亡リスクが高い結果でした。活動と座位の相互作用(かけ算の交互作用)も有意でした(ハザード比1.44)。著者らは、活動が少ない人では座位を減らすことが死亡リスクの緩和に役立つ可能性がある、と述べています(Watanabe et al., 2022)。
Ekelund らの2016年論文と同じ「活動で座位の害を相殺できるか」という問いに近いですが、閾値の切り方は違います(週150分と座位5時間)。対象も65歳以上に限られます。デスクワーク世代にそのまま「5時間が境」と読むのは行き過ぎです。
もうひとつは、コロナ禍の緊急事態宣言下で座位時間がどう変わったかを見た横断調査です(Koyama et al., 2021, Journal of Occupational Health)。15〜79歳の11,623人(男性63.6%)が対象です。
宣言中に在宅勤務を始めた人のうち、座位時間が2時間以上増えたと答えたのは12.8%でした。交絡を調整すると、在宅開始は座位2時間以上増加のオッズ比2.14でした。職種では、体を使う仕事の人と比べて、デスクワーカーのオッズ比が1.56でした(Koyama et al., 2021)。
これは死亡や病気の研究ではありません。「日本の働き方では、環境が変わると座位が伸びやすい」という事実の記録です。リモートワークや長時間デスクの方は、意図的に中断を入れないと、気づかないうちに座位が積み上がりやすい、と読んでください。
公的機関は、座位について何と言っているか
研究の数字を見たあとで、推奨の言葉を確認します。
WHOの2020年ガイドラインは、初めて座位行動について勧告を書きました。成人については次のとおりです(Bull et al., 2020, British Journal of Sports Medicine)。
- 座位で過ごす時間を制限する。
- 座位の時間を、軽い強度を含むあらゆる強度の身体活動に置き換えると健康上の利益がある。
- 座位が多い人の健康への悪影響を弱めるには、推奨される中〜高強度の量を上回ることを目指す。
推奨される有酸素の量は、週150〜300分の中強度、または週75〜150分の高強度(またはその組み合わせ)です。一方で、座位の「何時間まで」という数値の閾値は、証拠が足りず定められなかった、と明記されています(Bull et al., 2020)。
日本の厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(発行は令和6年1月)も、座位行動を新たに取り入れています(厚生労働省, 2024)。定義は「座位や臥位で、エネルギー消費が1.5メッツ以下の覚醒中の行動」です。デスクワークや、座って・寝ころんでテレビやスマートフォンを見る時間が例に挙がります。
推奨の言い方は、数値上限ではなく次の一文です。「座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないように注意する」。立位が難しい人にも、「じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも身体を動かす」と書いてあります。基本方針は「座りすぎを避け、今よりも少しでも多く身体を動かす」です。
成人の身体活動の目安は、歩行または同等以上を1日約60分以上(約8,000歩以上、週23メッツ・時以上)です。歩数の読み方は1日1万歩の記事に譲ります。
現状値として、平成25年の国民健康・栄養調査では、平日の総座位時間が8時間以上と答えた成人が、男性38%、女性33%いました(厚生労働省, 2024)。日本人の座位は、国際比較でも長い側だと同ガイドは紹介しています。
WHOも厚労省も、「座位ゼロ」や「何時間以下」とは言っていません。長くなりすぎないよう切る・軽い動きに置き換える・できれば中強度も積む、という三段構えです。Ekelund らの「60〜75分で相殺」は、この「できれば中強度も」側の、かなり高い水準だと位置づけられます。
実務的にどう考えるか
ここまでの研究とガイドを合わせると、こうなります。
- 座りすぎは、十分な中強度活動で相殺できる、という関連がある。ただし必要な量は1日およそ60〜75分で、決して少なくありません(Ekelund et al., 2016)。
- そこまで届かなくても、諦める必要はない。軽強度の活動が多い群でも、死亡リスクはかなり低い水準でした(中〜高強度の量をそろえた比較ではありません)。ゼロか100かではありません(Ekelund et al., 2019)。
- 座位時間そのものを減らすのも、別の効き方をする。日本人高齢者でも、低活動かつ高座位の群で死亡リスクが高かった報告があります(Watanabe et al., 2022)。
- テレビやスクリーンの時間だけは、運動で相殺しきれないことがある。理由は分かっていませんが、事実として記録されています。
- 途中で切るなら、立つより歩く。2分でも、20分ごとでも差が出た急性試験があります。まとめると歩行のほうが優れる、という結果です(Dunstan et al., 2012; Buffey et al., 2022)。
デスクワークの方にとって、1日60〜75分の中強度活動は簡単ではありません。しかし通勤で早歩きする、階段を使う、昼休みに歩くといった日常の動きも、厚生労働省のガイドでは身体活動に数えられています(厚生労働省, 2024)。まとまった運動時間を取れないことが、そのまま「何もできない」という意味にはなりません。
在宅勤務で座位が伸びやすい、という日本のデータもあります(Koyama et al., 2021)。タイマーで20〜30分ごとに立つ・歩く、通話は歩きながら、など、環境側の工夫が現実的です。
筋トレの量は筋トレは週何回が正解かを、睡眠との関係は睡眠とパフォーマンスを参照してください。
胸の痛み、強い息切れ、めまい、急な動悸がある方、持病や妊娠中の方は、活動量を増やす前に主治医やかかりつけ医に相談してください。転倒のリスクが高い高齢者は、無理な早歩きより、安全な環境での短い歩行を優先してください。
この記事の限界
- 死亡に関する大規模研究は、いずれも観察研究です。「座位時間が長いから死亡リスクが上がる」という因果を証明したものではありません。体調が悪い人ほど座りがちになる、という逆向きの説明も完全には排除できません。
- 2016年のLancet論文は、座位時間を自己申告で測っています。人は座っている時間を正確には覚えていません。2019年のBMJ論文は加速度計ですが、平均62.6歳・女性7割超です。若年層や男性で同じ数字になるとは限りません。両研究は測定法が違う別統合であり、新旧の対立ではありません。
- 「60〜75分」は集団に対する推定で、個人に必要な量ではありません。WHOも座位の時間閾値は証拠不足で定めていません。
- 中断の実験(Dunstan・Bailey・Buffey)は、食後血糖など短期の指標です。長期の病気や死亡を直接減らしたかは示していません。Bailey らの試験も Buffey の7件の1つで、10人では見えなかった立位の小さな血糖効果が、7件をまとめて計算すると見えた、という関係です。
- 日本人のデータは、高齢者の自己申告コホートとコロナ期の横断調査が中心です。デスクワーク世代の死亡リスクを日本だけで推定するには足りません。
- テレビ視聴が相殺されない理由は分かっていません。本文でも仮説として書いています。
- 持病のある方、胸の痛み・強い息切れ・めまいがある方は、活動量を増やす前に主治医にご相談ください。ここに書いたことは一般的な情報提供であり、医学的助言ではありません。
出典
- Ekelund, U. et al. (2016). Does physical activity attenuate, or even eliminate, the detrimental association of sitting time with mortality? A harmonised meta-analysis of data from more than 1 million men and women. The Lancet. doi:10.1016/s0140-6736(16)30370-1
- Ekelund, U. et al. (2019). Dose-response associations between accelerometry measured physical activity and sedentary time and all cause mortality: systematic review and harmonised meta-analysis. BMJ. doi:10.1136/bmj.l4570
- Dunstan, D. W. et al. (2012). Breaking Up Prolonged Sitting Reduces Postprandial Glucose and Insulin Responses. Diabetes Care. doi:10.2337/dc11-1931
- Bailey, D. P. & Locke, C. D. (2015). Breaking up prolonged sitting with light-intensity walking improves postprandial glycemia, but breaking up sitting with standing does not. Journal of Science and Medicine in Sport. doi:10.1016/j.jsams.2014.03.008
- Buffey, A. J. et al. (2022). The Acute Effects of Interrupting Prolonged Sitting Time in Adults with Standing and Light-Intensity Walking on Biomarkers of Cardiometabolic Health in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Medicine. doi:10.1007/s40279-022-01649-4
- Koyama, T. et al. (2021). Prolonged sedentary time under the state of emergency during the first wave of coronavirus disease 2019: Assessing the impact of work environment in Japan. Journal of Occupational Health. doi:10.1002/1348-9585.12260
- Watanabe, D. et al. (2022). Association of the interaction between physical activity and sitting time with mortality in older Japanese adults. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. doi:10.1111/sms.14234
- Bull, F. C. et al. (2020). World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. British Journal of Sports Medicine. doi:10.1136/bjsports-2020-102955
- 厚生労働省 (2024). 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 厚生労働省 身体活動・運動ガイド
さらに詳しく知りたい方へ
- 1日1万歩に根拠はあるのか——歩数という指標で見た場合の目安。認知症では答えが変わります。
- 運動の消費カロリーは思ったより小さい——運動で消費できる量の実際。
- 筋トレは週何回が正解か——健康のためなら週30〜60分で最大でした。
1日60〜75分の中強度活動を、どう確保するか。
デスクワークの方にとって、これは簡単な量ではありません。まとまった運動時間を取るなら、続けられる形で設計することが前提になります。続かない理由を5つに切り分ける考え方はこちらに、通う場所を生活動線から選ぶ方法は通う場所を距離で選ぶにまとめました。
ヨガやピラティスが座位中心の生活に何をもたらすのか(姿勢、腰痛、体幹)は、アウトカム別に一次文献を読み解いた記事をオンザショア立川店のサイトに公開しています。形態の選び方は目的別の選び方にあります。
このサイトと上記サイトは、いずれも株式会社エッセンが運営しています。利害関係を明示したうえで、本文では効果を断定していません。
この記事のまとめ
- 100万人超の解析では、週35.5メッツ・時超(およそ1日60〜75分の中強度)なら、座位と総死亡の関連は見られなくなった。テレビ視聴の関連は弱まったが残った。
- 加速度計の統合では、軽強度の活動が多い群でも死亡ハザード比は0.38(中〜高強度の量をそろえた比較ではない)。座位が長い群ほど死亡が高い(最長で2.63倍)。
- 20分ごとに2分歩くと食後血糖・インスリンが下がる。立つだけの中断は、単試験では差なし、7件のまとめでは血糖に小さい効果。歩くほうが優れる。
- 日本人高齢者では、低活動かつ高座位の群で死亡リスクが高かった。在宅勤務開始は座位2時間以上増加と関連した。
- WHOと厚労省は座位を減らすよう勧めるが、時間の数値閾値は定めていない。「今より少しでも多く動かす」が基本。
- 観察研究の関連であり、個人の必要量や治療の断定ではない。体調が悪い・持病がある場合は主治医に相談を。
よくある質問
運動していれば座りすぎても大丈夫ですか?
100万人超の解析では、もっとも活動的な群で座位と総死亡の関連が見られなくなりました。ただし必要な量は週35.5メッツ・時超、1日およそ60〜75分の中強度です(Ekelund et al., 2016)。決して少ない量ではありません。
そこまで運動できません。意味はありませんか?
あります。加速度計の統合では、軽強度の活動が多い群でも死亡ハザード比は0.38でした(Ekelund et al., 2019)。ただし中〜高強度の量をそろえた比較ではありません。ゆっくり歩く、立って家事をするといった日常動作も含まれます。
テレビを見る時間も同じですか?
同じではありませんでした。高い活動量でもテレビ視聴のリスクは減弱するだけで消えませんでした。最活動群では1日5時間以上でハザード比1.16でした(Ekelund et al., 2016)。
スタンディングデスクで足りますか?
足りない可能性があります。非肥満成人10人の試験では、20分ごとに2分立っても血糖は座りっぱなしと差がありませんでした(Bailey & Locke, 2015)。7件のまとめでは立位にも小さい血糖効果がありますが、軽い歩行のほうが優れます(Buffey et al., 2022)。
日本人でも同じですか?
65歳以上1万人超では、活動が少なく座位が長い群だけ死亡リスクが高かった報告があります(Watanabe et al., 2022)。WHOも厚労省も座位の時間閾値は数値化していません(Bull et al., 2020; 厚生労働省, 2024)。