- 2,135人の解析。体重が増えた(=飲みすぎた)のは11%で、そのうち11%が重度の低ナトリウム血症だった。
- 原因は「渇きを超えた飲水」と「運動によるアルギニンバソプレシン分泌」。汗によるナトリウム損失は主な原因ではない(一部では関わる)。
- 161kmウルトラでの低ナトリウム血症の発生率は15.1%(年により4.6〜51.0%)。気温が高い年ほど多いが、この環境では脱水に伴うものの方が多かった。
- 低ナトリウム血症になった人の35.6%は、体重の上では「脱水」していた。体重変化だけでは判断できない。
- 計画的飲水と渇きに従う飲水を扱う総説には、コメント論文と著者の応答がある。推奨は「十分だが過剰ではない」という上下限つきのもの。
よく言われていること——運動するときは、こまめに、たくさん水を飲む。
研究が示していること——持久系の大会で最も危険なのは、飲みすぎによる低ナトリウム血症。2,135人の解析では、体重が増えた(=飲みすぎた)11%の人のうち11%が重度の低ナトリウム血症でした。専門家のあいだでも、飲み方の推奨は一致していません。
脱水は、どれくらいから問題になるのか
まず、目安として使われている数字から確認します。
体重の2%以上の水分喪失——これが、多くの推奨で境界として使われています。体温調節機能の障害、心血管系への負担の増大、そして多くの条件下(暑い、長い、強度が高い)での有酸素運動能力の低下と関連するとされています(Kenefick, 2018, Sports Medicine)。
体重70kgの人なら、1.4kgの減少にあたります。
ただし、影響の大きさは競技によって違います。「低水和が十分に重度であれば、運動成績に悪影響を及ぼし、健康上の危険をもたらす。筋力とパワーの種目は、持久系の種目より一般に影響を受けにくい。ただし、繰り返し強い努力を要するチーム競技では成績が損なわれる」(Maughan & Shirreffs, 2010, Scand J Med Sci Sports)。
同じ論文は、次のようにも書いています。「軽度の低水和は有害ではない」。そして「高強度の努力では、競技中に飲む必要はなく、飲む機会もないかもしれない」。
渇きに従うのでは、足りないのか
ここが最初の論点です。
人の渇きには、既知の性質があります。「渇きは、完全な再水和が達成される前に和らぐ傾向がある」(Kenefick, 2018)。つまり、渇きが消えた時点では、まだ水分は足りていない可能性があります。
発汗量が多く、自由飲水が汗の損失に追いつかない場合、体水分の不足は蓄積していきます。
そこで、計画的な飲水——あらかじめ量とタイミングを決めておく方式——が推奨される場面があります。
| 計画的な飲水が最適とされる状況 |
|---|
| 90分を超える活動、とくに暑熱下 |
| 発汗量が多い高強度の運動 |
| 成績が問題になる場面 |
| 糖質を1分あたり1g摂りたいとき |
| 渇きに従えば足りうるとされる状況(同総説) |
|---|
| 短時間の運動(1時間未満〜90分程度) |
| 涼しい条件での運動 |
| 強度が低い運動 |
同総説は、体重が増えるほど飲まないことも勧めています。
著者の助言は「発汗量が多い人、あるいは運動成績を気にする人は、想定される条件と環境で自分の発汗量を測り、体重の2%を超える減少を防ぐように飲水を調整すべきである」というものです(Kenefick, 2018)。
なお、この総説はスポーツ飲料メーカー系の研究所が支援した特集号に載ったものです。
この推奨には、公開されたコメントと応答がある
この分野の面白いところは、専門誌上でのやり取りが公開されていることです。
上記の総説に対し、別の研究者らがコメント論文を出しました(Valenzuela ら, 2018, Sports Medicine)。
これに対する著者の応答も、同じ誌に載っています(Kenefick, 2018, Sports Medicine)。
飲みすぎの危険——運動関連低ナトリウム血症
ここからが、この記事で最も重要な部分です。
運動関連低ナトリウム血症(EAH)は、血中のナトリウム濃度が下がりすぎる状態です。1985年に「水中毒」として最初に記述されました。
症状は、脳圧の上昇によるものです。吐き気、嘔吐、頭痛、錯乱から、重度では認知機能の著しい変化、除皮質硬直、呼吸困難、昏睡、そして死に至ることもあります(Altieri ら, 2025, J Endocrinol Invest)。
2005年、『PNAS』に掲載された研究は、持久系種目の2,135人の血中ナトリウム濃度と体重変化を分析しました(Noakes ら, 2005)。
| 状態 | 割合 |
|---|---|
| 正常な水分状態で完走 | 39% |
| 体重減少で完走 | 50% |
| 体重が増加して完走(=飲みすぎ) | 11%(231人) |
体重が増加した231人の内訳です。
| 血中ナトリウム | 割合 |
|---|---|
| 正常またはむしろ高い | 70% |
| 129〜135 mmol/L(軽度の低下) | 19% |
| 129 mmol/L 未満(重度) | 11% |
著者らの結論は「過剰な水分摂取に伴う体重増加が、運動後の血中ナトリウム低下の主要な原因であった」というものです。同論文は、原因として飲みすぎのほか、抗利尿ホルモンの抑制不足と、ナトリウムの不活性化も挙げています。
注意深く読む必要があります。体重が増えた人の70%は、ナトリウムが正常か、むしろ高かったのです。
——飲みすぎが即座に低ナトリウム血症を意味するわけではありません。しかし、低ナトリウム血症になった人の主な原因は、飲みすぎでした。この2つは別のことです。
汗で塩が失われるから、だけでは説明できない
「汗で塩分が失われるから、スポーツドリンクが必要だ」という説明をよく聞きます。EAHの主な原因としては、汗による塩の損失は寄与が小さいとされています。ただし、一部の選手では体液やナトリウムの不足も関わると書かれています。
2017年の総説は、原因を次のように整理しています(Hew-Butler ら, 2017, Frontiers in Medicine)。
「渇きを超えた飲水と、非浸透圧性のアルギニンバソプレシン放出が、最も一般的な原因である」
アルギニンバソプレシンは、腎臓に水を再吸収させるホルモンです。通常は体液が濃くなったときに出ますが、運動によって、体液の濃さとは無関係に分泌されることがあります。その状態で水を飲むと、水が体内にとどまり、ナトリウム濃度が薄まります。
2025年の総説も、同じ整理です。「病態生理は多因子的で、過剰な水分摂取と、身体活動によって誘発される非浸透圧性のアルギニンバソプレシン分泌を含む。発汗によるナトリウム損失は、EAHへの寄与としては重要度が低いように見える」(Altieri ら, 2025)。
ただし、単純ではない
「飲みすぎなければ大丈夫」で終わればよいのですが、そうではありません。
161kmのウルトラマラソンで5年分のデータを再解析した研究の結果です(Hoffman ら, 2013, Med Sci Sports Exerc)。完走者887人、うち669人でレース後のナトリウム濃度を測定しています。
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| EAHの発生率(全体) | 15.1%(年によって 4.6〜51.0%) |
| 気温との関係 | 気温が高い年ほど発生率が高い |
| レース後ナトリウムと体重変化の関係 | 弱い(r = 0.17。0に近いほど関係が薄い。体重が減った人ほどナトリウムが低い側) |
そして、EAHになった人の水分状態の内訳です。
| 水分状態(体重変化による分類) | EAHのうちの割合 |
|---|---|
| 過剰水分(体重変化 0以上) | 23.8% |
| 正常(0% 〜 −3%) | 40.6% |
| 脱水(−3%未満) | 35.6% |
EAHになった人の3分の1以上が、体重の上では「脱水」していました。
——つまり「体重が減っていれば飲みすぎではない」とは言えません。
この複雑さのため、体重の変化だけで判断することには限界があります。
なお、この研究では体重が3%を超えて減っても、成績への悪影響は見られなかったとも書かれています。著者らは、渇きを超えた積極的な飲水や過剰なナトリウム補給は勧めないと述べています。
暑さが加わると、何が変わるか
ここまでの議論は、気温が上がると全部きつくなります。
2021年、『Physiological Reviews』に掲載された包括的なレビューは、暑熱下運動で起きることを次のように整理しています(Périard ら, 2021)。
「深部体温の上昇と、発汗による体水分の喪失は、暑熱下での長時間運動の自然な帰結である」
——これらが恒常性を乱すと、高体温、低水和、ナトリウムの乱れ、そして場合によっては労作性熱中症に至る、という整理です。
注意すべきは、「自然な帰結」と書かれている点です。体温が上がり水分が減ること自体は、異常ではありません。問題になるのは程度です。
実際、ウルトラマラソンの研究では気温が高い年ほど低ナトリウム血症の発生率が高いという関係が見られました(Hoffman ら, 2013)。ただし著者らの結論は、この環境では低ナトリウム血症は飲みすぎより脱水に伴うものの方が多かった、というものです。暑い年ほど多かったのは事実です。ただ、低ナトリウム血症になった人全体で見ると、体重が増えた人(23.8%)より、3%を超えて減った人(35.6%)の方が多かったのです。暑いと、飲みすぎと脱水の両方が起こりえます。
このサイトの運営者は加温した環境のスタジオを運営しています。だからこそ、暑い環境での注意を先に書きます。
熱中症への備え。頭痛・吐き気・めまい・だるさが出たら、運動をやめて涼しい場所で休んでください。衣服をゆるめ、首・わきの下・太ももの付け根を冷やしてください。意識がはっきりしていて自分で飲めるなら、水分と塩分をとってください。意識がもうろうとする、呼びかけへの返事がおかしい、自分で水が飲めない、けいれんがあるときは、無理に飲ませないでください。ためらわずに119番で救急車を呼んでください。休んでも良くならないときは医療機関を受診してください。水の飲みすぎ(低ナトリウム血症)と熱中症は症状が似ていて、自分では見分けにくいとされています。吐き気があるときや吐いているときも、無理に飲ませず、救急隊や医師の判断を受けてください。
マラソンランナーにおける運動関連低ナトリウム血症を扱った総説も、「研究が進んでいるにもかかわらず、低ナトリウム血症性脳症による神経障害、さらには死亡が起き続けている」と書いています(Klingert ら, 2022, Journal of Clinical Medicine)。同じ総説は、危険因子として高気温と女性を挙げています。
そもそも、測るのが難しい
ここまで「体重の2%」「体重変化」という指標を使ってきました。この指標自体に問題があります。
水分状態の評価には難しさがあるという指摘もあります(Kavouras, 2019, European Journal of Nutrition)。
現場で試すと、どうなるか
推奨どおりにやったらどうなるか、を調べた研究があります。
2015年の国際コンセンサス会議の推奨(渇きの程度に応じてのみ水分を摂る)を、事前の説明会で参加者に徹底したうえで、トレイルマラソンとアイアンマン・トライアスロンで検証した研究です(López de Lara ら, 2022, Frontiers in Nutrition)。
| 大会 | 完走者 | 飲水量(中央値) | ナトリウム正常を維持 | 低ナトリウム血症 | 高ナトリウム血症 |
|---|---|---|---|---|---|
| トレイルマラソン | 36人 | 800 mL/時 | 83.3% | 1人(134 mmol/L) | 14%(著者は臨床上問題なしと判断) |
| アイアンマン | 94人 | 900 mL/時 | 77.6% | 1人(134 mmol/L) | 21.2%(著者は臨床上問題なしと判断) |
40kmの行軍を自由飲水で行った観察では、健康な男性兵士28人(完走25人)で、自由飲水では低ナトリウム血症も高ナトリウム血症も起きませんでした(Nolte ら, 2019, Military Medical Research)。体重は平均4%減っています。著者自身は、1つの飲み方で低ナトリウム血症を防げるとは言えないと書いています。
これらは「渇きに従う方式」を支持する結果です。ただし——参加者は事前に4回の説明会を受けています(López de Lara ら, 2022)。何も教えずに「好きなだけ飲め」と言うのとは違います。
ウルトラ持久走における2つの方式を検討した2025年の総説は、実験室では計画的飲水が有利な場合がある一方、実世界ではどちらが常に優れるとは言えないとまとめています。同じ総説は、渇きに従う方式は、発汗量が多い人や渇きの感覚が鈍い人ではうまくいかないことがあるとも書いています(Wierick ら, 2025, Nutrients)。
渇きを感じにくい人(高齢の方など)や、持病・利尿薬などの服薬がある人は、渇きだけを頼りにせず、主治医に相談してください。
個人差が、想像より大きい
ここまで「体重の2%」という共通の目安を扱ってきました。しかし発汗量そのものに、大きな個人差があります。
個別化した水分補給戦略を検証した2024年の研究は、前提をこう書いています。「発汗量と電解質の損失には、大きな個人間のばらつきがある。個別化した取り組みは、この問題を克服して個人の必要を満たしうる」(Li ら, 2024, Nutrients)。
この研究では、12人の参加者が11回の実験室訪問を行い、通常環境と高温環境の両方で、個別化戦略と対照(市販の電解質飲料を自由に飲む)を比較しています。
個別化戦略の作り方は、次のようなものです。
・想定する強度と環境で、実際に運動する
・運動前後で体重を測る(飲んだ量と排尿量も記録する)
・その差から、1時間あたりの発汗量を算出する
——つまり「自分で測る」という手順です。他人の推奨量を当てはめる方法ではありません。
全米アスレティックトレーナーズ協会の見解書も、推奨の第2項目にこれを挙げています。「さまざまな環境での運動中の、身体活動をする個人の発汗量を定量せよ」(McDermott ら, 2017)。
そして第3項目が「身体活動の前・中・後に、十分だが過剰ではない水分状態を促す飲水習慣を、個人とともに作り上げよ」です。
「十分だが過剰ではない(sufficient but not excessive)」——この一節が、この分野の推奨を要約しています。
——上限と下限の両方が示されている助言は、一般向けの情報ではあまり見かけません。
持久系運動での再水和を検討した総説も、5つの再水和方法を提示しています。事前の計画が「まったく何もしない」から「フィールドでの模擬走行によって発汗量を決定する」まで幅があるという形です(Armstrong, 2021, Nutrients)。どれか1つが正解ではなく、選ぶものだという整理です。
「飲みすぎを促していないか」という問い
水分補給と身体活動を扱った円卓会議の声明もあります(Casa ら, 2005, Current Sports Medicine Reports)。
全米アスレティックトレーナーズ協会の見解書も、両方向の危険を明記しています(McDermott ら, 2017, Journal of Athletic Training)。
「不十分な水分補給(低水和)と過剰な摂取(過水和)のどちらもが、運動成績を損ない、健康上の危険を高めうる。アスリートは身体活動中の低水和を防ぐために水を利用できる必要があるが、飲みすぎと低ナトリウム血症の危険も認識していなければならない」
ロンドンマラソンの参加者298人を対象に、意図する飲水戦略とEAHについての知識を調べた研究もあります(Leggett ら, 2018, Journal of Athletic Training)。ランナーがどこから情報を得ているかが、安全性に直結するという問題意識です。
では、どうすればよいのか
| 研究で分かっていること | 実務上の意味 |
|---|---|
| 低水和も過水和も、両方が危険 | 「たくさん飲めば安全」ではない |
| 長時間の持久系の大会では、EAHの主因は渇きを超えた飲水 | 体重が増えるほどは飲まない |
| 発汗によるナトリウム損失の寄与は小さい(一部では関わる) | 「汗で塩が抜けるから」だけでは説明できない |
| 涼しい環境の短時間運動なら、渇きに従えば足りることが多い | 暑い環境・加温した室内での運動には、そのまま当てはめられない |
| 90分超・暑熱下では計画的飲水が有利とされる | 長時間の屋外運動では、事前に量を考える |
| 発汗量には大きな個人差がある | 他人の量を真似しない |
| 体重変化だけでは判断できない | 体重計の数字を唯一の指標にしない |
| EAHの3分の1以上は体重上「脱水」していた | 「体重が減っていれば大丈夫」ではない |
日常や暑い環境では、のどが渇く前からこまめに水分を補給するという公的な案内があります。
ジムやスタジオでの運動について、この記事から言えることは限られています。
紹介した研究のほとんどは、マラソン、ウルトラマラソン、トライアスロン、長距離行軍が対象です。筋力・パワー種目は持久系より成績への影響を受けにくいとされますが(Maughan & Shirreffs, 2010)、これは安全性の話ではありません。
近年は短時間の種目やチーム競技でも低ナトリウム血症が認められていると書かれています(Altieri ら, 2025)。
渇きに従えば足りうるとされるのは、短時間・涼しい条件・低強度の場合です(Kenefick, 2018)。暑い環境や加温した室内での運動には、そのまま当てはめられません。ホットヨガなど加温環境での飲み方は、この記事の研究では確かめられていません。
なお、汗と痩身の記事で扱ったとおり、運動後の体重減少の大部分は水分です。飲めば戻ります。
利害関係の明示
このサイトは、立川のヨガ・ピラティススタジオ「オンザショア」およびボクササイズのプログラムと同じ運営です。スポーツドリンクやサプリメントの販売はしておらず、この記事で特定の製品を勧めることもありません。
一方、当運営は加温環境でのヨガ(ホットヨガ)も扱っています。発汗量が多い環境を提供している側が、飲水について書いているという利害があります。この記事では、飲みすぎの危険を主題に据え、「たくさん飲めば安全」という説明を支持していません。
この記事の限界
- 紹介した研究の大半は、持久系の競技者が対象です。加温スタジオや一般のジム利用者への一般化は確かめられていません。
- 計画的飲水と渇きに従う飲水を扱った総説には、コメント論文と著者の応答が公開されています。両論文の内容は確認できていません。
- 水分状態の評価には難しさがあるという指摘もありますが、その論説の抄録と全文は確認できていません。
- EAHの発生率は、年によって 4.6% から 51.0% まで変動しています。平均値は、その年の条件に大きく左右されます。
- 「渇きに従う」方式を検証した研究では、参加者が事前に複数回の説明会を受けています。教育なしでの再現性は分かりません。
- この記事は、1日に何リットル飲むべきかという日常の水分摂取については扱っていません。運動中の飲水に限った内容です。
- この記事は抄録に基づいており、原論文の全文は確認していません。健康・医学に関する記述は一般的な情報提供であり、医学的助言ではありません。頭痛・吐き気・めまい・だるさが出たら、運動をやめて涼しい場所で休んでください。衣服をゆるめ、首・わきの下・太ももの付け根を冷やしてください。意識がはっきりしていて自分で飲めるなら、水分と塩分をとってください。意識がもうろうとする、呼びかけへの返事がおかしい、自分で水が飲めない、けいれんがあるときは、無理に飲ませないでください。ためらわずに119番で救急車を呼んでください。休んでも良くならないときは医療機関を受診してください。水の飲みすぎ(低ナトリウム血症)と熱中症は症状が似ていて、自分では見分けにくいとされています。吐き気があるときや吐いているときも、無理に飲ませず、救急隊や医師の判断を受けてください。心臓・腎臓の疾患がある方、利尿薬を含む薬を服用中の方、渇きを感じにくい高齢の方は、水分摂取について主治医にご相談ください。
出典
- 【2,135人・飲みすぎが主因】Noakes, T. D. ら (2005). Three independent biological mechanisms cause exercise-associated hyponatremia. PNAS. doi:10.1073/pnas.0509096102
- 【計画的飲水の推奨】Kenefick, R. W. (2018). Drinking Strategies: Planned Drinking Versus Drinking to Thirst. Sports Medicine. doi:10.1007/s40279-017-0844-6
- 【コメント】Valenzuela, P. L. ら (2018). Comment on: "Drinking Strategies: Planned Drinking versus Drinking to Thirst". Sports Medicine. doi:10.1007/s40279-018-0905-5
- 【著者の応答】Kenefick, R. W. (2018). Author's Reply to Valenzuela et al. Sports Medicine. doi:10.1007/s40279-018-0902-8
- 【EAHの内訳が複雑】Hoffman, M. D. ら (2013). Exercise-associated hyponatremia and hydration status in 161-km ultramarathoners. Medicine & Science in Sports & Exercise. doi:10.1249/mss.0b013e31827985a8
- Hew-Butler, T. ら (2017). Exercise-Associated Hyponatremia: 2017 Update. Frontiers in Medicine. doi:10.3389/fmed.2017.00021
- Altieri, B. ら (2025). Pathophysiology and treatment of exercise-associated hyponatremia. Journal of Endocrinological Investigation. doi:10.1007/s40618-025-02673-7
- 【両方向の危険】McDermott, B. P. ら (2017). National Athletic Trainers' Association Position Statement: Fluid Replacement for the Physically Active. Journal of Athletic Training. doi:10.4085/1062-6050-52.9.02
- Casa, D. J. ら (2005). American College of Sports Medicine roundtable on hydration and physical activity: Consensus statements. Current Sports Medicine Reports. doi:10.1097/01.csmr.0000306194.67241.76
- 【水分状態に関する論説】Kavouras, S. A. (2019). Hydration, dehydration, underhydration, optimal hydration: are we barking up the wrong tree? European Journal of Nutrition. doi:10.1007/s00394-018-01889-z
- Maughan, R. J. & Shirreffs, S. M. (2010). Development of hydration strategies to optimize performance for athletes in high-intensity sports. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. doi:10.1111/j.1600-0838.2010.01191.x
- López de Lara, D. ら (2022). Exercise-Induced Hyponatremia: An Assessment of the International Hydration Recommendations. Frontiers in Nutrition. doi:10.3389/fnut.2021.781229
- Nolte, H. W. ら (2019). Ad libitum water consumption prevents exercise-associated hyponatremia and protects against dehydration. Military Medical Research. doi:10.1186/s40779-019-0192-y
- Wierick, S. C. ら (2025). Hydration Strategies in Ultra-Endurance Running: A Narrative Review of Programmed Versus Thirst-Driven Fluid Intake. Nutrients. doi:10.3390/nu17223526
- Périard, J. D. ら (2021). Exercise under heat stress: thermoregulation, hydration, performance implications and mitigation strategies. Physiological Reviews. doi:10.1152/physrev.00038.2020
- Armstrong, L. E. (2021). Rehydration during Endurance Exercise: Challenges, Research, Options, Methods. Nutrients. doi:10.3390/nu13030887
- Klingert, M. ら (2022). Exercise-Associated Hyponatremia in Marathon Runners. Journal of Clinical Medicine. doi:10.3390/jcm11226775
- Leggett, T. ら (2018). Intended Hydration Strategies and Knowledge of Exercise-Associated Hyponatraemia in Marathon Runners. Journal of Athletic Training. doi:10.4085/1062-6050-125-17
- Li, H. ら (2024). Personalized Hydration Strategy to Improve Fluid Balance and Intermittent Exercise Performance. Nutrients. doi:10.3390/nu16091341
よくある質問
運動中はこまめにたくさん飲んだほうがよいですか?
両方向に危険があります。持久系の大会で起きる低ナトリウム血症の主な原因は、渇きを超えた飲水です。専門家の見解書は「十分だが過剰ではない」水分状態を勧めており、上限も示されています。
汗で塩分が失われるから、スポーツドリンクが必要ですか?
運動関連低ナトリウム血症の主な原因としては、発汗によるナトリウム損失の寄与は小さいとされています。一部の選手では体液やナトリウムの不足も関わると書かれています。主因は過剰な水分摂取と、運動によるアルギニンバソプレシン分泌です。
体重が減っていれば飲みすぎではないですか?
そうとは限りません。161kmウルトラマラソンの研究では、低ナトリウム血症になった人の35.6%が体重の上では「脱水」に分類されていました。
1時間くらいのジムの運動でも気にすべきですか?
涼しい環境の短時間運動なら、渇きに従えば足りることが多いとされます。一方、短時間の種目でも低ナトリウム血症は報告されています。暑い環境や加温した室内での運動には、涼しい条件の知見をそのまま当てはめられません。
自分に必要な量はどうすれば分かりますか?
想定する強度と環境で実際に運動し、前後の体重差と飲んだ量から1時間あたりの発汗量を算出する方法が、見解書で推奨されています。発汗量には大きな個人差があり、他人の量は当てはまりません。